南京錠をプレゼントされました。

あのコはそもそも男にプレゼントをするようなタイプじゃなかった。女友達はたくさんいるしみんなから慕われていたけれど、反面男に対する態度はものすごく厳しくて、滅多なことで甘い顔はしないっていうオンナだった。「カワイイけど性格がキツイ」とか「笑ったところを見たことが無い」ってまわりの男はよくぼやいていた。そしてそれはオレも同じ意見だった。
だけど縁っていうのは不思議なもので、なにかの拍子に一緒になることが多かった俺たち二人は、それでもなんとなく気があったんだろう。なんだかんだで仲良くなって、気が付いたらお互いのことを意識するようになっていたんだと思う。

だけど仲が良くなるにつれ、彼女が心に深い闇を抱えていることを知った。そのことでオレの彼女に対する気持ちが変わることは無かったけれど、同時に自分の力ではその彼女の心の闇をどうすることも出来ないんだって気付いたんだ。

あの日、決してオトコの前で弱い部分を見せない彼女が泣いたのも、結局なにが理由かいまだにオレにはわからない。その晩、楽しそうに笑っていた彼女は公園のベンチに座ると、突然何もしゃべらなくなった。じっと暗闇を見詰めたまま考え事をしていたみたいだ。彼女はもともとマイペースな性格だから、オレも特に気にすることなく彼女が「こっちの世界」に帰ってくるのをボーっと待っていたんだけれど、うつむいて泣いている彼女に気が付いたときにはかなり驚いた。彼女が泣いたのはそれが最初で最後だった。
彼女は何も言わず、オレにプレゼントをくれた。南京錠がついたネックレスだった。別にパンクロックが好きなわけじゃないけど、オレだってシドチェーンくらいは知っている。彼女がそのカギを持っていたかどうかは分からないけれど。

結局、その後彼女と会うことはなかった。彼女は手の届かない場所にいってしまったんだ。オレは今でも首から南京錠をぶら下げている。カギはまだ見つからないままだ。